谷島 潤 さん

   

 石岡生まれの谷島君は、大学でデザインの基礎やプロダクト・建築を学ぶ一方、陶芸サークルに入りました。

デザイナー志望でしたが、デザインしたものを丸投げ外注するのではなく、自分で考えたものを自分で作れる(一人で完結)陶芸に魅力を感じるようになっていきました。
 2008年卒業後まもなく、

「きむらとしろうじんじん 野点+妄想屋台祭り」(水戸芸術館)に

手作り陶器販売屋台「呑み処ひばち」として参加。じんじんさんの型破りな発想に惹かれ、人とつながる楽しさを実感しました。
(*じんじんさんの野点=リヤカーに、陶芸窯・素焼き茶碗・釉薬などの陶芸道具一式と、抹茶セット一式を積んで、お客さんが自分で絵付けした茶碗を楽焼き(約40分)で焼いて、お茶が飲めるカフェを開く。
*妄想屋台=「魅力の予感」を路上に、「あったらいいな」「やってみたいな」を屋台にして新しい出会いを広げる参加型プロジェクト)
 2009年には自分の窯を持ち、クラフトフェアやイベントに参加するようになります。

 

青ヌカ・白釉 マグ

 2011年の東日本大震災は、谷島君の転換期にもなりました。
割れた陶器を活用して復興活動に取り組む益子の若手陶芸家が、3月末に「リビルド益子」を結成。県内外のイベント会場などで、益子へのエールをカケラに書いてもらう「カケラ・プロジェクト」に参加。

 

鉄釉 一輪差 (2017年復活プロジェクトで焼成)

 

濱田庄司記念益子参考館の登り窯は一部崩壊しましたが、2015年「登り窯復活プロジェクト」として、益子の作家中心に集まり、40年ぶりに火を入れ約90人の作品焼成。2017年の「復活プロジェクト2」では「カサマシコ」の愛称から笠間周辺の作家にも声を掛け、より広いつな
がりを生むプロジェクトに。谷島君は2回とも参加。
そのかかわりから、「陶ISM」(作り手・つなぎ手・使い手をつなぐ展示会)にも参加。
益子の古民家での展示会が恒例でしたが、2013年笠間ギャラリーロードの店舗を利用して、「陶ISM スピンオフ展」を開催。「新米と秋刀魚のうつわ展」をテーマにした「舞台」でも出品してもらい、それが初対面でした。参加20名の作家工房訪問してお話をうかがいましたが、谷島君は控えめな話し方で、かえってうちに秘めた情熱を感じました。
しばらくして「舞台」の常設開始。

 

スリップウェア リム皿

 

実用的な道具に美しさを見いだした「民芸」、特にスリップウェアが好きで、展示会に行ったり書籍で勉強したりして、自分でも試作を重ねています。
 

岐阜の友人と原土を掘りに行き、自ら土作りして使うこともあり、人とのつながりを大切にしながら、枠にはまらずのびのびと作陶を楽しんでいるように見えます。

 


   最近手に入れた大きめの電気窯

お父様と一緒に 基礎から窯場を作りました

 

好きな言葉は「童心無限」
無限の可能性のある子ども、その子どもの頃の気持ちを忘れない
 見た目は決して派手ではありませんが、使うほどにしみじみ良さを感じる谷島君の器です。

坂本 新 さん

        

   「坐辺師友」(北大路魯山人)
(優れた人・物に囲まれて生活しているとその心をおのずと学びとることができる。自分の周りのすべてが師であり、友である)
今年30という若さながら、様々な場所で多くの人とかかわってきた坂本君らしい座右の銘です。
 船橋生まれの坂本君は、高校(美術工芸科)でデザイン・工芸全般を学び、3年では陶芸を選択。

 


その後、瀬戸窯業高校(陶芸専攻科)でさらに2年間やきものの勉強、20代前半には2年ほど瀬戸の貸し工房・貸し窯で制作し、クラフト市などに参加。(瀬戸や多治見では、廃業した製陶所・窯元の工場を市が管理し、シェア・貸し出ししていて、若い作家が利用している)
 瀬戸に根を下ろしてもいいが 外の世界を見るのもいいかと思い、トットネス(英国)へー民藝運動にもかかわったバーナード・リーチの窯もあるセントアイビス(英国)に近い、アート・サブカルチャーの盛んな小さな町。まず語学学校へ通い、修了後、陶芸・染織・ガラスなどモノ作りの作家と積極的に交流しました。
帰国後、沖縄「石垣焼」の窯元で2年ほど職人として勤め、陶芸体験のインストラクターも。
 2015年5月実家や東京にも近い窯業地 笠間に移住、その頃「舞台」に来店した坂本君と知り合いました。 
瀬戸では原土から土づくり、釉薬作りして作陶する作家が多いのに対して、笠間ではデザイン性がより重視されるように感じたそうです。

 


試行錯誤しながら、土もの(陶器)に、藍と翠 ミドリ の釉薬を重ね掛けした「藍翠釉 ランスイユウ」 の器を作り始め、「舞台」でも常設開始。
深みのある釉薬とキレのある形は、新鮮に受け止められ、少しずつ人気が出ました。

 市内のギャラリーで「ブローチ展」に参加する時、新しいことをしたいと考え、以前資料館で見たラスター彩の輝きを思い出し、初挑戦。重く地味なやきものから、輝きのある軽やかさへ。

 


ラスター彩―10世紀前後にペルシャで作られた陶器の技法で現地では途絶えている。20世紀後半、多治見の加藤卓男が日本で復元。ラスター=落ち着いた輝きの意)
坂本君のラスターは、磁器で本焼き後、液体チタンを付けて低温焼成した輝きで、加える顔料で様々な色に。陶器と違って、磁器は吸水性がないため経年変化が少なく、軽くて丈夫。「自分が使いたい器」を作っていこうと考えるようになり、現在に至ります。

 


 10代でやきものの基礎を学び、たくさんの人の刺激を受けながら挑戦し続ける坂本君、これからも楽しみです。