坂本 新 さん

        

   「坐辺師友」(北大路魯山人)
(優れた人・物に囲まれて生活しているとその心をおのずと学びとることができる。自分の周りのすべてが師であり、友である)
今年30という若さながら、様々な場所で多くの人とかかわってきた坂本君らしい座右の銘です。
 船橋生まれの坂本君は、高校(美術工芸科)でデザイン・工芸全般を学び、3年では陶芸を選択。

 


その後、瀬戸窯業高校(陶芸専攻科)でさらに2年間やきものの勉強、20代前半には2年ほど瀬戸の貸し工房・貸し窯で制作し、クラフト市などに参加。(瀬戸や多治見では、廃業した製陶所・窯元の工場を市が管理し、シェア・貸し出ししていて、若い作家が利用している)
 瀬戸に根を下ろしてもいいが 外の世界を見るのもいいかと思い、トットネス(英国)へー民藝運動にもかかわったバーナード・リーチの窯もあるセントアイビス(英国)に近い、アート・サブカルチャーの盛んな小さな町。まず語学学校へ通い、修了後、陶芸・染織・ガラスなどモノ作りの作家と積極的に交流しました。
帰国後、沖縄「石垣焼」の窯元で2年ほど職人として勤め、陶芸体験のインストラクターも。
 2015年5月実家や東京にも近い窯業地 笠間に移住、その頃「舞台」に来店した坂本君と知り合いました。 
瀬戸では原土から土づくり、釉薬作りして作陶する作家が多いのに対して、笠間ではデザイン性がより重視されるように感じたそうです。

 


試行錯誤しながら、土もの(陶器)に、藍と翠 ミドリ の釉薬を重ね掛けした「藍翠釉 ランスイユウ」 の器を作り始め、「舞台」でも常設開始。
深みのある釉薬とキレのある形は、新鮮に受け止められ、少しずつ人気が出ました。

 市内のギャラリーで「ブローチ展」に参加する時、新しいことをしたいと考え、以前資料館で見たラスター彩の輝きを思い出し、初挑戦。重く地味なやきものから、輝きのある軽やかさへ。

 


ラスター彩―10世紀前後にペルシャで作られた陶器の技法で現地では途絶えている。20世紀後半、多治見の加藤卓男が日本で復元。ラスター=落ち着いた輝きの意)
坂本君のラスターは、磁器で本焼き後、液体チタンを付けて低温焼成した輝きで、加える顔料で様々な色に。陶器と違って、磁器は吸水性がないため経年変化が少なく、軽くて丈夫。「自分が使いたい器」を作っていこうと考えるようになり、現在に至ります。

 


 10代でやきものの基礎を学び、たくさんの人の刺激を受けながら挑戦し続ける坂本君、これからも楽しみです。